京都新聞コラムVol.2『竹は名脇役!?』2021.7.6 真下彰宏

弊社職人の真下彰宏が京都新聞洛西版のコラムを執筆しております。

ぜひご一読ください。

「竹は名脇役!?」

竹垣って聞いて何が思い浮かびますか?「隣の竹垣に竹立てかけた!」ぱっと頭に浮かんだのはこの早口言葉っていう方も少なくないかもしれませんね。あとは「竹の壁」とか「お寺」とか「料亭」とか、具体的な竹垣の名称で「建仁寺垣」を思い浮かべる竹垣上級者もいるかもしれませんね!次に、竹垣を見たことはありますか?この問いにすっと答えが出てくる方は多くないかもしれません。でもそれって仕方がないのです。古くから日本人の生活には「竹」が使われており、そのほとんどが日用品として生活を支えていました。食事をするためのお箸、花を活けるための花器、みかんを入れるための籠、、、そう!主役を引き立てるのが「竹」なんです。竹垣の場合も同じで「お庭を引き立たせる竹垣」ってな具合です。決して主役になることがないから、見たはずだけど記憶にない。日本人の生活をずっと支えてきた竹ですが、近くにありすぎて気づかない。まあ私が言うのもなんですが、これが竹製品の良いところです。竹垣には、仕切る、塞ぐ、囲う、装飾するなどの機能がありますが、お庭のブロック塀を覆ったり、玄関から見える洗濯物や掃除道具など見せたくない景色を隠す。そうありながら落ち着きのある素敵な和空間を作ります。天然の竹には節があったりデコボコしたり無機質なものにはない深い美しさがあります。今まで関わった竹垣で特に印象的なのは、昔ながらの製法でビスを使わずに作った桂離宮の竹枝離宮垣。拝観入り口から110メートル続く壮大な竹垣です。竹の枝を編み込んで作る技術も鑑賞ポイントです。竹垣には、「建仁寺垣」や「金閣寺垣」「光悦寺垣」などお寺の名前がつくものがたくさんあります。最初にそのお寺で作られてその名が付いたとされています。実は、長岡京市のお寺の名前がついた竹垣があるんです。昨年の秋に長岡京市にあるおばんざいのお店「なかの邸」とその近くにある立命館高校の学生と一緒に考え産学連携でチャレンジした竹垣です。コロナ禍の挑戦でしたが「勝龍寺垣」と命名した新しいデザインの竹垣を生み出しました。本当は主役になってはいけない竹垣が絵画のように美しく佇んでいます。

(京都新聞洛西版2021.7.6)